クールシニアのウェブマガジン

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クールは「カッコイイ」ですが、背筋をのばして歩く60+シニアの情報を集めます。

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エディター

中村 滋 Shigeru Nakamura

BE-PAL、DIME、サライなどライフスタイル雑誌を創刊。

カテゴリ:フード&ドリンク メディア 

TPP問題で我々ができること

・TPPこと環太平洋戦略的経済連携協定、いわゆる自由貿易協定が煮詰まってきていますが、果たしてどの辺で着地するのでしょうか。米が例外になるのかどうか気にしていますが、米に関しては消費者としてよりは、どうしても日本民族として対応してしまいます。米が高くてかなわんという人はあまりいません。

・そのせいか農業保護のためと称して莫大な税金が使われていて、一説にはあれやこれや毎年2兆円を超えるといわれます。食料自給率がわずか39%(これはカロリーベースで、生産額ベースなら66%)でいざとなったら困るといいますが、石油やエネルギーをほぼすべて輸入している日本は貿易立国しか道がありません。農薬も化学肥料もハウスの暖房もすべて海外依存です。

・こんなことを思ったのも、新米の季節を前に「米の嘘と真実」ー新規就農者が見た、とんでもない世界!ーという新刊の新書を読んだからです。不動産会社の1社員が社長命令で米作りを始めて七転八倒、非常識と理不尽の中で「いかに日本の農政がおかしいか」を体験する話です。バランスがとれていて、大変わかり易い米問題勉強本です。

・就農人口の約60%が第2種兼業農家(主たる収入が農業以外)で、高齢化し跡継ぎがいないのですから、ここにいくら補助金をつぎ込んでも意味がありません。果たして族議員がまだいる自民党に農地法の改正ができるでしょうか?

・米作りを聖域化してしまった我々も責任があります。一般企業では時代に対応できないと消滅するのですから。気がつけば、耕作放棄地、休耕田が滋賀県ぐらいになっているのだそうです。だから「田圃は水資源、自然のダム、税を注ぎ込んでも守れ」論は成り立ちません。

・ところで米は作り方から、慣行栽培米(定められたら化学肥料、農薬を使用)、特別栽培米(その化学肥料と農薬を50%以下にしたもの)、有機栽培米(有機肥料と場合によっては少量の農薬)、自然農法(化学肥料、農薬不使用)とあるのだそうです。

・一般的な米(慣行栽培)が1キロ400円ぐらいとすると有機栽培で2倍から3倍の値段になります。生産量と手間暇ですね。ただ安全安心をとるなら自然農法米です。秋田の大潟村で大規模化している石山農産の自然農法(あの映画になった「奇跡のリンゴ」で知られる木村農法)あきたこまちやササニシキは1キロ1000円程度です。山間部の田圃だと効率が悪くキロ数千円になりますが、そういうところは環境や水が良質なので高価でも価値があります。

・我々にできることはこれです。一生懸命良い米を作っている全国の篤農家の米(やはり特別栽培米以上)を買いましょう。最近、町の米屋でもこうした農家の米を扱っていますし、企業体なら通販をやっています。日本の農政改革に一石を投じることになります。

・近正宏光・著「米の嘘と真実」角川SSC新書 760円。カバー裏のコピー「不動産会社社員が社長命令で、コメ生産を中心とした食料事業部門を立ち上げるーはずが、農地法に阻まれて個人負担で農業生産法人を立ち上げて新規就農するハメに。サラリーマン人生で培ってきた市場主義、顧客主義という常識は農業の世界では、忌み嫌われる考えだった」。

・帯に「農地法、コシヒカリ、兼業農家、有機栽培、農協、みんなデタラメ!!」と極太ゴチック体で強調して書いてありますが、中身はそんな風に喧嘩を売っているわけではなく、淡々と現状を述べていてバランスがとれています(編集者がよくやるあおり文句です)。

・著者が代表を務める農業生産法人・越後ファームの有機栽培米 新潟奥阿賀野産こしひかり。新潟は新米が10月末からなので、当然24年産です。これは試し米として売られている2合パックで525円(東京・日本橋三越本店)。まあ、ふつうにおいしいコシヒカリで、特別すごいということはありませんが、今が一番米の状態が良くないときなので、新米が出たらあらためて試そうと思います。この越後ファームの自然農法米は山間地のため極めて高価で、キロ5000円以上し、富裕層向けというか贈答用になっています。

次号9月9日月曜日

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