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夜更かし必至の2019前半海外ミステリー
・裏表紙のあらすじを読まずとも買う海外翻訳ミステリーがありますが、そんな作家が次々と世を去り楽みが減っています。ただ、この春から夏にかけてはそんな作家名だけで手に取る作品が続きました。
・まず4月に、元アメリカ陸軍憲兵中佐、ジャック・リーチャーが主人公のリー・チャイルド作「ミッドナイト・ライン」講談社文庫。この主人公はキャラクター設定が面白いです。クレジットカード、免許証、スマートフォンなどなどを持たず(必要な時、人のを借りるか強奪!)、つまり公的存在を断ち、監視カメラを避けて一切履歴を残さず行動すること。
・現金を使い、バスで移動するという徹底ぶりで、下着を含む衣類や靴も洗濯せず使い捨てにします。持ち歩くものは歯ブラシだけ。たしかに歯ブラシというのは借りられないし、モーテルの安物ではきれいにならない。
・昔、身一つで放浪する人物に会ったことがありますが、持ち物は箸、歯ブラシを手拭いで包んだものだけでした。ジャック・リーチャーは究極のミニマリストです。
・さて話は、そのリーチャーがある街の古道具屋で、ウインドー越しに陸軍士官学校の卒業リングを見たことから始まります。このシリーズ、ややダレた作品もありますが、今回のは傑作です。
・次は6月の新潮文庫「危険な弁護士」。法廷ものではこのジョン・グリシャムの右に出る者はいませんが、今回も期待を裏切リません。
・弁護士ものでは後述のマイクル・コナリーのリンカーン弁護士シリーズもいいです。そういえば、フォードのリンカーンを事務所にしているからリンカーン弁護士と呼ばれているのですが、グリシャムのこの主人公はフォードの大型カーゴバンをオフィスにしていて似ていますが、命を狙われるのでモーテルを転々し、事務所を持たないという設定なのでちょっと違いますね。
・刑務所の塀の上を歩くという言い方がありますが、この主人公も、どっちに落ちるかわからないような行動で、市や警察とやり合います。ただ、法廷での弁論合戦はほぼなく、わかりやすいハードボイルド小説になっているのが、今までにない新鮮さであります。
・最新7月の海外ミステリー文庫は、講談社文庫「訣別」。刑事、警察小説の雄、マイクル・コナリーのハリー・ボッシュシリーズの最新刊。警察を追われたボッシュが私立探偵として、大富豪から人探しを頼まれるという設定(ただしフェルナンド市警嘱託刑事でもあるので、バッジを持っています)。
・個人的な感想ではありますが、この半年間でNo.1の夜更かし必至海外ミステリーだと思います。この手の傑作が、少なくとも月に一冊は欲しいのですが・・・。
次号7月29日月曜日
by 2019.07.26