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ホンダジェット苦闘30年、トップの決断力
・ホンダ・エアクラフト・カンパニーが製造販売するN420NC・ホンダジェットが2017年のQ1でデリバリー数世界No.1(小型ビジネスジェット)というニュースがありました。
・理由は、一般航空機より高層を高速で飛んで時間短縮し、省エネに加えて翼上エンジンのために室内が広く静か‥‥と競合機を圧倒しているというのですが、それにしてもよくここまでたどり着いたものです。
・エンジンも機体も製造というのは希有なことで、超保守的な航空機世界ではリスクが過大です。あのポルシェが航空機エンジンに参入して失敗、販売したものを回収買い取って企業責任を果たさなければならなかったそうですから、この業界は厳しいです。
・パソコンが32ビット時代に、飛んでいる飛行機は8ビット仕様だったとかで、安全を担保するには最先端より安定なのだと聞いたことがあります。そう考えると小型ジェットエンジン開発といい常識外れの翼上エンジンマウント機体といい、30年も耐えてFAAの型式証明を取得したのは驚異です。
・30年以上支出だけでまったく利益を生まない事業といえば、サントリーのビール事業を思い浮かべますが、サントリーは非上場企業なのでちょっと違います(それでも偉業ですが)。
・ホンダスピリッツといえば簡単ですが、そうではありません。その長期の苦闘の間にリーダー、社長の決断があり、その判断なくしてホンダジェットは生まれなかったと思われます。
・ホンダジェットの開発物語はいくつか出版されていますが、「リーダー、トップはいかに決断したか」という視点で書かれた本が東洋経済新報社の新刊「技術屋の王国 ホンダの不思議力」です。
・著者の片山 修さんは、小学館文庫の創刊時にベストセラーになった「ソニーの法則」ついで「ホンダの兵法」を書き下ろしてもらいました。高校の先輩であり、経営者の集まり「一片塾」でも親しくしてもらった経済ジャーナリストです。
・この著書の中で、利益を生まず金食い虫と社内で批判されたプロジェクトを支え続けた自動車メーカーの名経営者を二人上げています。ホンダの川本信彦社長とトヨタの奥田 碩社長。奥田社長はハイブリッドのプリウス生みの親です。
・今日のような先行き不透明な時代こそ、こういう先を読む目、ビジョンを持つリーダー、経営者と、情熱を燃やし続ける現場が必要です。
次号9月18日月曜日
by 2017.09.15