クールシニアのウェブマガジン

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エディター

中村 滋 Shigeru Nakamura

BE-PAL、DIME、サライなどライフスタイル雑誌を創刊。

カテゴリ:メディア 

ホントにAI(人工知能)は人間を超えるか①

・今最もホットな科学のテーマはAI(人工知能)でしょう。IoTで様々なものがネットにつながり、そのビッグデータをAIが処理し最適な答えを出す‥‥車の自動運転も犯罪防止システムもこのテクノロジーがもとになります。

・そこで最近書店に並んでいる人工知能の新書を2冊読んでみました。共に2030年にコンピューターが人類の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えるという、人工知能研究の世界的権威レイ・カーツワイルが2007年に書いた「ポストヒューマン誕生:コンピューターが人類の知性を超えるとき」の中で提唱した説が出てきます。

・まず「人工知能と経済の未来」井上智洋 文春新書ですが、サブタイトルに2030年雇用大崩壊とあるように、AIの登場で雇用や経済がどう変化するかがテーマです。

・肉体労働、事務労働、頭脳労働の内、中間の事務労働が最初に影響を受けます。ついでスーパーのレジ係、受付、ホテルのフロント、運転手、コック、ツアーガイド、警備員、肉体労働の農業などの一次産業にも広がり、AIが人間を超えたら果たしてどんな仕事が残るのか‥‥。

・AIには特化型と汎用型とあって、自動運転カーや警備ロボットや料理ロボットなどは特化型だそうです。最近登場した音声対応家電もこれです。画像認識+AIで犯罪者を空港や駅で発見するシステムはもうできています。あとはIoTで集積したビッグデータ(監視カメラデータ。個人情報に使い方が問われますが)があれば、法整備より効果的なテロ対策になります。

・問題は汎用AIです。スマートフォンのSiriやOk Googleが進歩したものといえますが、人間に替わって答えてくれ、判断してくれることになります。ときどき過去の判例だけで判決を出す裁判官がいますが、あれならAIでじゅうぶんです。

・この汎用AIなるものが予測によれば2030年頃に現れるといわれますが、人間の知能を超えるとはどういうことなのか、この新書にも答えはありません。

・AIが不得手なジャンルは、クリエイティビティ(創造)、マネージメント(経営・管理)、ホスピタリティ(もてなし)と書いてあります。ただ、これらも"創造”を含めて、ある程度は例のディープラーニングとプログラムでできそうな気がします。

・AIが生産の効率を上げ、労働の大部分を代替し経済構造を変えるのは、多分その通りでしょう。経済学者の本なので、データやグラフで第4次産業革命に至る経済構造変化の歴史などの記述が多く、AIについては少ないです。学者がみな言う「人口減、イノベーション枯渇で経済成長減速」も出てきますし。

・人間の知能と人工の知能は何が違うのかという、もっとも興味のあるテーマを期待すると面白くありません。カバーに付いた2017新書大賞ベスト10入賞とか推薦人の「この本すごいです。これは絶対読んだ方がいいです」も、どうなんでしょう。

・この点、もう一冊の人工知能の核心 NHK出版新書は、NHKスペシャル「天使か悪魔か」であの羽生善治が取材した話をベースにまとめているだけに、人間の知能と人工知能の違いに迫っていて、面白いです。

・人間知能の特性についてのいくつかの指摘は興味深く、次号で述べます。

次号4月21日金曜日

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