クールシニアのウェブマガジン

毎週月・金曜日発行

クールは「カッコイイ」ですが、背筋をのばして歩く60+シニアの情報を集めます。

Edit

エディター

中村 滋 Shigeru Nakamura

BE-PAL、DIME、サライなどライフスタイル雑誌を創刊。

カテゴリ:メディア 

日本初のダガー賞受賞作を読んでみた

・英国推理作家協会が発表するゴールドダガー賞(最優秀長編作品)を、日本人が初めて受賞したというので読んでみました。王谷 晶「ババヤガの夜」河出文庫(2020年)。表4のあらすじを見るとどうやら暴力団もので、この手のものは読まないことにしています。"借金、覚醒剤、売春"が絡む湿っぽいスケールの小さいものが多くてうんざりするからです。

 

・ところがコレはヤクザものというより"暴力もの"という感じで、悪くないです。まず主人公・新道依子のキャラクターが立っていて、「さて、彼女どう動くのか」を期待させ、暴力シーンも多彩、なにより先が読めない、つまりどう話が収まっていくのかわからない面白さがあります。

 

・これはコミック編集経験者からすると、当たり前ですが小説では珍しいです。作者の王谷氏はビッグコミック・スピリッツの漫画原作「サカナになったさっつんの話」(2021年)も書いているので、そのへんも心得ているのかもしれません。なおタイトルの"ババヤガ"はどこにも出てこない(見落とした?)のですが、スラブ民話に出てくる鬼婆だそう。

 

・ところでダガー賞というミステリー賞はクセがあって、受賞作がエンターテインメントとして優れているかというと必ずしもそうではありません。あまり好みではないグレッグ・ルッカを何度か選んでいるし。最近で読んで良かったのは2019年受賞の「ストーンサークルの殺人」M.W.クレイヴン。まあ個人の感想ではありますが。

次号7月11日金曜日

ページtopへ