クールシニアのウェブマガジン

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エディター

中村 滋 Shigeru Nakamura

BE-PAL、DIME、サライなどライフスタイル雑誌を創刊。

カテゴリ:メディア 

日本が元気になるのは里山と下町から

・「里山資本主義」という新書が売れているようです。日本総合研究所の藻谷浩介氏とNHK広島取材班の共著(角川書店刊)で、2014新書大賞だそうです。内容を簡単にいうと、これからの日本は従来のグローバルなマネー資本主義から地域の特性を生かした里山資本主義にシフトすべきだということを語っています。

・例としてヨーロッパの小国・オーストリア、それに日本の岡山、広島のある地域が林業を中心にエネルギー問題を解決しつつあることをあげています。これまでの大量生産・大量消費、効率で回転するシステムが限界にきているという指摘で、まったく同感です。

・実際ユニクロ、ヤマダ電機、マクドナルドなど安い価格で大量に販売する仕組みが国内ではもうノビシロがなくなってきています(これらの企業が中国、インドネシア、インドなど海外へ進出する理由はこれです)。

・読んでいて思い出したのは、20年ほど前に経産省に頼まれて参加した「21世紀に向けた産業の新展開に関する研究会」でのプレゼンテーションです。雑誌編集者の立場から、成熟したこの国が向かうべきは「自立」ではないか、国の自立、企業の自立、個人の自立、それに地方の自立が求められているというような話をしました。

・最近よく言われるように、日本を活性化するのは規制緩和と地方分権ですが、官僚が最も手放したがらないのがこれです。なぜなら役人の力とはこの権限と金(元は我々の税金なのですが)ですから。

・ならば地方から自立へ、という発想が生まれてきます。実際、日本のようなまとまりのある国でも地域は多様で、中央ですべてを決めるのはもはや無理です。エネルギーも巨大な発電所から分配するよりも、地域ごとに得意な方法を取ればいいし、均質化しない多様なシステムが(効率が悪いように見えて)結果として安心安全です。震災で学んだのは、電気、ガスのほか石油、カセットコンロ、七輪などいざという時のエネルギーの多重化でした(オール電化などナンセンス)。

・日本のような成熟した国では人々の好みは多様化し細分化しています。これに応えることが、内需拡大になります。最近成功例として取り上げられるのは、地域の特性を活かしたサービスや生産物、それに小規模な企業の個性的な商品ばかりです。関西商人のいう「小商いの積み重ね」。そういえばある書店に「小商いのすすめ」というコーナーがありました。

・藻谷氏は里山資本主義は都会では難しいといっていますが、「下町資本主義」が可能です。食糧やエネルギーの地産地消は無理でも、多様化の進んでいる都会では小商いの宝庫といえます。

・このトレンドが大きくなる次のステップは、その作り手と受け手を結びつけるマーケットの熟成だと思います(楽天やYahoo!、Amazonはその一部を担っていますが)。ポイントは受け手(消費者、ユーザー、視聴者、読者などなど)に参加させることで、この結果行き着く先は一人の作り手から一人の受け手へ、1 to 1 ( 簡略化して1-2-1)になります。これこそ無駄のないほんとのサスティナブル、持続可能な社会の実現です。

 

・「里山資本主義」を読み終わったところで、新潮社から「しなやか日本列島のつくりかた」が出版されました。同じ藻谷浩介氏の新刊です。「商店街」「限界集落」「観光地」「農業」「医療」「鉄道」「不動産」という海外進出に頼れない国内産業を中心にしたテーマで、学者、プランナー、医師、企業人と対談していますが、視点は新書と同じで、国内市場の活性化についてです。感想ですが、実践的エピソードより論が多く面白味には欠けます。学者の割合が多いせいかもしれません。

・いずれにしろ、地域や町、コミュニティーから変革が起これば、成熟し多様化した日本の内需は活性化すると思います。

次号3月24日月曜日

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