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名器ストラディヴァリウスが主役のミステリー
・クラシック好きの数はそこそこいると思いますが、演奏楽器が気になるという人はどれだけいるでしょうか。とはいえクラシック音楽ファンならストラディヴァリウス、グァルネリウス、アマティという名前は知っていると思います。中でも最も有名なヴァイオリンやチェロの名器といえばストラド(ストラディヴァリウスが製作した楽器の呼称)で、今や500本ぐらいしか現存しておらず、値段も数億円といわれます。
・そんな世界の三大名器が登場するユニークな推理小説があります。「ヴァイオリン職人の探求と推理」ポール・アダム作、創元推理文庫。
・主人公はストラディヴァリウスの修理を任されるイタリア・クレモナの一級ヴァイオリン職人です。もちろん修復だけでなく、見分けがつかないほどの贋作が作れるほどの腕前で、ヴァイオリンの仕組みや歴史に通じているので随所に楽器の話が出てきます。
・300年以上前のこれら名器は表板、裏板、横板のボディー以外は、棹も指板も駒(製作時より今はかなり高くなっています)、魂柱(表板の振動をボディー全体に伝える)も交換、調整されていることや、ストラディヴァリウスがなぜこれほど評価されるのかなどが克明に語られます。
・もちろん推理小説としてもよくできていて、名器をめぐるコレクター、仲買人、オークション、贋作、それに殺人が絡まって織りなすストーリーは秀逸で、楽器好きでなくても充分楽しめます。
・室内楽時代のニコラ・アマティの作品は「繊細な音」で知られ、その弟子のアントニオ・ストラディヴァリは「きらびやかな鳴り」といわれる世界一の名器を作り、さらにその一番弟子である(多分師匠より優れているといわれる)ギュゼッペ・グァルネリ・デル・ジェスは大ホール時代に相応しい「重厚にして類い希な音量」というそれぞれ"関係と特徴"になるといわれています。
・楽器は「TONE音質・SUSTAIN響き・VOLUME音量」が三大要素といわれますが、その三大名器を聴き比べるCDがあります。TSUGUO TOKUNAGA[ GOLD CONCERT] APOLLON MUSIC INDUSTRIAL CORP.
・NHK交響楽団の首席コンサートマスターだった徳永二男氏が三つの楽器を替えながらヴィエニャフスキ、クライスラー、J.S.バッハ、ドビュッシー、サラサーテを弾きます。中でもガボット「無伴奏パルティータ№3」のテーマを、三つの楽器で弾き比べる部分は面白いです。音楽家でなくても三回ぐらい聴くとその違いが明瞭になります。
次号7月21日月曜日
by 2014.07.18