カテゴリ:メディア
常識にも賞味期限があると指摘する本
・厚労省の勤労統計不正、財務省の文書改ざん等で揺れる情けない我が国ですが、統計、データ、数字がいかに重要かを教えてくれる注目の書籍があります。
・世の中は良くなっているのかと問えば、悪くなっているのではと答える人が多いかもしれません。日銀の施策やアベノミクスも効果を確信できず、北方領土も還ってこない、世界へ目を転ずれば、核兵器削減は進まず、貿易摩擦は拡大、テロは収まらず・・・と、暗い話ばかりです。
・そんな中、ちょっぴり気分が明るくなる本が話題になっています。スウェーデンの医師が書いた「ファクトフルネス」という新刊(日経BP社 著者:ハンス・ロスリング他)で、世界の統計を精査して、あらゆる面から我々の思い込みや勘違いを指摘します。
・冒頭にクイズがあります。例えば「世界の平均寿命は? 50、60、70歳のどれか?」最も多かった答えが60歳ですが、答えは70歳(現在は72)。「1996年絶滅危惧種に指定されたトラ、ジャイアントパンダ、クロサイのうち、当時より危機に瀕しているのは? 答えはゼロ。日本人の正解は16%。
・ファクトフェルネスとは、事実に基づいて世界を見ることだそうです(本のタイトルとしてはよくないですね、日本では)。なぜ、ノーベル賞受賞者をはじめ、学者、ジャーナリストなどから一般国民まで誤解と思い込みが多くなるのか。まずメディアは明るいニュースを取り上げません。ニュースとは言ってみれば悪い情報のことです。
・ジャーナリズムの端くれにいた身からすると、週刊誌の作り方は「大変だ!と騒ぐ脅しと意外性」と教え込まれた記憶があります。
・ジャーナリズムは、良いか悪いかの対立、分断が好きです。一方で小さな進歩はゆっくりで気がつきません。そんな記事を書いたら記者はデスクに怒鳴られます。
・一方情報を受け取る個々人は、瞬時に判断する危険回避(古代人の本能)から、うわさ話や大げさな意見に同調しがちといいます。世界をドラマチックに眺めて、格差は広がり世界は分断している、少しづつ良くなっているとは思いもしないのだそうです。
・日本はどうなのか。なんとなくあまり良くはなっておらず、先行きは不安という若者が多いと言います。しかし小さな進歩はここでもあります。
・日本のGDPは7年連続で僅かとはいえ増加(2017年+1.14%)、失業率は3%を切って2.8%で主要国最低、交通事故死は1970年16765人をピークに下がり2018年3532人(増えていると思われている65歳以上の高齢者も前年比2.7%減)、自殺者も2003年34427人をピークに減少2015年24025人で前年比5.5%減(それでも交通事故より多いのですが)、寿命は良く知られるように2018年は女87.3歳(世界2位)男81.1歳(世界3位)・・・。
・世界の国を平均所得と平均寿命で表した世界保健チャート。レベル1:1日当たり所得2ドル以下、レベル2:所得4ドル、レベル3:所得16ドル、レベル4:所得32ドル、日本はここに位置し、健康ではトップにある。
・世界人口は現在約70億人ですが、人口学者がいうには増え続けて地球はパンクしないそうです(前からデータで示しているとか)。理由は本書を読んでもらうとして、この本を読むと、世界の75%は中流国であり、事実に基づいて世界をみれば、世の中それほど悪くないと思えてきます。
・TBSの木曜深夜に「世界比べてみれば」という人気TV番組がありますが、それを観てもよくわかります。文化の違いはあっても、暮らしはあまり違いがありません。
・我々の心構えとして、常識には賞味期限があり、常にアップデートしなければならないということのようです。
・個人的に興味のあったデータですが、ギターを持っている人は、1962年5000人に一人だったのが2014年100人に一人になったそうです。たしかに世界は良くなっているような気がします。
次号2月8日金曜日
by 2019.02.04