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優秀な個人よりチーム力の時代
・極めて興味深い本を読みました。「多様性の科学」です。昔から45億年の生命進化のキーワードは"多様化"だと思っていたので迷わず手に取りました。
・オスとメスに分けた生殖活動とか、DNAを混ぜて変化させたり、突然変異を起こすウィルスを生んだり、すべて多様化を促す仕組みです。狂牛病はなぜ発生するのか、近親交配はなぜ禁止されるのかも"均質化"を防ぐためです。
・均質化、クローン、同質性が何をもたらすか‥‥。また多様化の効能・効用について「多様性の科学」に様々な例が出てきます。
・9/11同時多発テロをなぜCIAは予測できなかったのか。CIAの超優秀と言われる人員構成は、男性・アングロサクソン・プロテスタント・高学歴ばかり。皆同じように思考し、異端を排除する。個人個人がどれだけ優秀でも同じ背景を持つものだけで決めると間違いが多発する。
・一方、多様な人員構成の成功例。2次大戦でドイツが使用したエニグマという暗号機を解読した英国のチームは、優れた数学者ばかりでなく、女性、ユダヤ系、ゲイ、クロスワードパズル愛好家などの混成集団。戦争を3年早く終結させたという。
・また現在、特許の出願数は個人よりチームが上回り、株式ファンドの運用も個人からチームへ移っている。イノベーションは一人の天才が生み出してきたと考えられてきたが、どうもそうではないということがわかってきた。電話、電報、蒸気機関、写真、真空管、ラジオ、などの近代発明はすべて複数の起源がある。進化論でもダーウィンとウォレスはほぼ同時。
・この人的交流という集団脳が新しいものを生み出す原動力になるらしい。脳の大きさではネアンデルタール人の方が大きかったと言われるのに、なぜホモサピエンスが残ったのか‥‥は、小集団で生活していた前者と大集団であった現人類との差、つまり集合知の違いだったらしい。頭脳の明晰さよりコミュニケーション能力や学習能力の方が大切であるということ。
・最近のノーベル賞も複数名受賞が多くなっているし、またアメリカが圧倒しているのも多民族国家のせい。ベンチャー起業家のイーロン・マスクを始め、エスティー・ローダー、ヘンリー・フォード、ウォルト・ディズニーなど世界的有名企業家は圧倒的に移民の子孫‥‥などなど、科学的に分析した一冊。
「多様性の科学」マシュー・サイド/著 ディスカバー21発行 四六判並製368P 2200円は、ダイバーシティー、多様性、働き方改革が言われる今、経営者はもちろん集団を率いるリーダーには刺激的な書籍です。
次号4月4日月曜日
by 2022.04.01