カテゴリ:季節 野遊び
多摩川では魚扁に春と書いてマルタと読みます
・「糸遊に 結びつきたる 煙かな」芭蕉が春に詠んだ句です。この季節、晴れた日の多摩川の河原は、糸遊(陽炎)が揺らめいています。そして多摩川の春の風物詩といえば、遡上マルタの産卵です。マルタというのは降海型のウグイの仲間で、大きいものは60センチを超えます。魚扁に春と書くと鰆(さわら)のことですが、多摩川ではマルタと呼ぶことにします。
・桜の季節がその最盛期で毎年この頃に釣り竿を持って川に入ります。今年は気温が20度近くあがり、風もなく、川岸は桜色です。河原にはナズナ、カワジシャ、カラスノエンドウ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウなど春の野草も花満開です。
・産卵は流水で洗われてきれいな小石のある流れの強い荒瀬です(産むのは主に夜ですが)。この日は、水深わずか20センチほどの瀬に50〜60センチのマルタが集まって、水面から背鰭を出し水しぶきをあげて大騒ぎしていました。
・こんなところに毛鉤を投げると、口以外のどこかに鉤がかかって(スレといいます)大変なことになります。なにしろ60センチ前後の魚が激流を走るので、竿は倒されるは糸で手を火傷するはでまったく手元によらず、最後はフックが外れます。
・それでもなんとか3尾ほどを口に掛けてやりとり。もうこれで充分で、今年のマルタ釣りはおしまいです。多摩川森林組合(マルタ釣りクラブ名。丸太なので)の人の話によれば4月いっぱい楽しめるそうです。
・60センチほどの立派な雄。赤と黒の体色はこの時期に現れる婚姻色。釣りはいわゆるキャッチ&リリースで、キャッチ&ストマックではありません(食べられるといいますが、その気になりません)。つまり魚はいい迷惑です。できるだけ優しく流れに戻します。
・産卵直前の牝。腹がはちきれそうに膨らんでいてそっと水に返します。もはや日が落ちたら産むばかりなのに、なぜ毛鉤を咥えるのでしょうか不思議です。キラキラ光るルアーに食いつくのと同じで、目の前に来るものに突っかかるのかも。
・瀬付いて暴れまわるマルタで水面はこの有様。近づいても逃げません。しかしここまで熱中していると、さすがに釣りにはなりません。
・マルタ釣りの道具。初めは「たかが大きいウグイの雑魚釣り」と、あり合わせの竿やリールで川に入ったのですが、面白かったので年に一度の遊びですが、次の年タックルを新調しました。
・フラットに流れが広がる東名高速の上流部の多摩川。いつもより水量がやや少ないです。
次号4月7日月曜日
by 2014.04.04