カテゴリ:季節 野遊び
終わりなき夏休みの過ごし方
・1週間ほど岩手、秋田、山形の“森と渓”を巡ってきました。新緑の季節は興味深いもので満ち溢れています。岩手で案内してくれたロッドビルダーのUさんは「今の若い釣り人は釣れるか釣れないかしか言わない」と嘆いていましたが、昔から言われるように“自然の大きさ、範囲は、その人の興味と知識の量に比例する”であります。
・岩手の渓は、桐、藤、ミズバショウが終わり、ホウノキ、トチが最終章。今が盛りなのはタニウツギとニセアカシア(あるいはハリエンジュ。こっちの名前がいい)で、流れの湿地はクリンソウ(
写真)が咲いています。
・渓流の水音を遥かに凌ぐ大音響の正体はエゾハルゼミで、捕まえて手に取るとその小ささに驚きます。この音量の仕組みはブルートゥース・スピーカーなんかのオーディオ装置に活かせそうです。
・八幡平の下の玉川添いにあった新鳩ノ湯温泉は大増水で流され無くなっていたのには驚きましたが、下流の公園の中を流れるタニウツギの咲く沢には今もイワナがいて毛鉤に飛びついてきました。
・秋田では古い友人のSさんと滝巡りをして、ギンリョウソウや見たかったホウオウゴケに遭遇しました。苔、あるいは苔テラリウムはますます流行りのようで、先駆者の石河さんの教室は即満席だとか。“苔登山”という新刊が出ましたが、それより“苔見の滝”の方がリアルです。滝は水の滴る岩肌と湿気に満ちていて、苔天国です。
・山形は鳥海山から湧き出る湧水と川を回りましたが、大水が出たと言うのですが20年前とほぼ変わっていません。川の脇の小さな池にはクロサンショウウオの白い卵塊があり、エラのついた子供が泳いでいました。
・巨魚・タキタロウで知られる東大鳥川では増水で釣りになりませんでしたが、季節はちょうどモリアオガエルの産卵期で、ヤナギの枝に白い塊がぶら下がっています(写真の4箇所に)。
・中にはまるでシュピーゲルアオガエルのように、地面で産んでいる横着者もいました(緑マダラの姿ではなく、地面の土に擬態して黒褐色)。そしてもちろん、水の中では落ちてくるオタマジャクシをイモリが待ち構えています。
・アウトドア雑誌の編集に長年関わってきましたが、つくづく自然と遊んできてよかったと思います。アウトドアとウクレレとミステリー小説がなかったら、“毎日が日曜日”とか“終わりなき夏休み”とか言われる時間を、どう過ごしていいかわかりません。
次号6月17日月曜日
by 2019.06.14