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三國連太郎の趣味の良さの秘密
・最近で記憶に残る役者、しかも亡くなる直前まで第一線で存在感のあった俳優といえば、三國連太郎でしょう。
・今年七回忌。『三國連太郎、彷徨う魂へ』宇都宮直子・著 文藝春秋刊が出ました。手に取った理由は、壮絶な生い立ち、生涯貫いた役者としての生き様や愛憎乱れる私生活への興味ではありません。
・たしかに、曖昧な出自から一度も鉄砲を打たずに終わったという戦争体験、俳優になるまでの職業遍歴、女性関係などドラマチックですが、著者によると虚実織り交ぜているそうです。
・それでも老齢化を演ずるために歯をすべて抜く行為は凄まじい(1957異母兄弟)。あの役柄で変幻自在のシャーリーズ・セロン(2003モンスターでの醜い姿は今も記憶に残る)をはるかに凌ぎます。
・これだけの日本映画史に足跡を残した名優の「言葉」に関心はありますが、それよりも吉田健一や伊丹十三のようないい育ちではない三國連太郎のセンスの良さはどう培養されたのかを知りたかったからです。
・それは車遍歴を見るとよくわかります。まず、ポルシェ(356)に乗った最初の俳優だそうです。1963年創立のポルシェ・クラブ・オブ・ジャパンに高倉健と共に名を連ねています。
・他にもジャガーMr1とかビュイックとかありますが、極め付きはメルセデス・ベンツE500。ここが300SLのスター石原裕次郎との違いです。
・このW124シリーズのベンツEクラスは名車の中の傑作、コストダウンなど考えてもいない、一番いい時代のベンツといわれます。直6用のエンジンルームに5LのV8を載せたモンスターでありながら、見た目は端正な4ドアセダン。ポルシェが開発に携わったらしいです。
・釣りバカ日誌のスーさんとどうにも結びつかない。新刊を読んでもこの謎は解明されませんでした(ま、狙いが違いますが)。
・強いてあげれば、この言葉。
「僕みたいに無能に属する人間はね、無駄遣いを山のようにするしかないんですよ。‥‥何かの代償なしに、人は成長できません」
・車も瀟洒な家、別荘、インテリアなどもそれかもしれません。
・記憶に残る最近の名優といえばもう一人います。樹木希林です。彼女も趣味の良さは飛び切りです。車選びでわかります。
・まず高級車はありません。ルノー4、VWビートル、ボルボ・アマゾン、ベビーロールスロイスと呼ばれるバンデンプラ・プリンセス(オースチンの高級仕様)、さらにシトロエンの2CV(フランスではその昔、馬力で税金が決まってました)は7台乗り継いだといいます。あの宮崎駿氏も多分未だに所有していると思いますが、2馬力という会社名の由来です。
・極め付きはシトロエンHトラック。日本では200台ぐらい販売されたそうですが、この前輪駆動で車幅約2mの小回りの効かない商用車を、也哉子さんを乗せて運転したというから驚きです。
・ベストセラーになっていることからわかるように、名言はたくさんあります。高齢者には「驕らず、人とくらべず、面白く生きればいい」いまの時期には「ピンチピンチ、チャンスチャンス、ランランラン」。
次号5月11日月曜日
by 2020.05.08