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出版業界もの増の海外ミステリー
・最近、欧米で出版業界ものが人気のようです。まずジョン・グリシャムの「狙われた楽園」中央公論新社。法廷もので知られるグリシャムがミステリー小説に挑んだ「グレート・ギャツビーを追え」の続編です。
・ハリケーンが吹き荒れる中、殺された作家の死を探る書店店主の物語。2作ともまあまあの出来ですが、実話を元にしているといわれる最新刊の「冤罪法廷」新潮文庫の方が本領発揮です。
・これよりはるかに面白かったのは、ハヤカワ文庫の「匿名作家は二人もいらない」。アレキサンドラ・アンドリューズという新人作家のデビュー作で、既にユニバーサルが映画化権を取得したと言います。
・話はこうです。超ヒット作を出したモード・ディクソンと称する匿名作家が、編集アシスタントを募集します。これに応募したのが作家志望の主人公・フローレンス・ダロウ。出版社をクビになり、自信を失っていて、ベストセラー作家からノウハウを学ぼうとします。
・物語はニューヨークとモロッコのマラケシュ(スークも登場)で展開し、どんでん返しも二転三転、楽しめます。タイム誌が2021ベスト・クライム・フィクションと評しているように、これはクライム・ノベル、つまり犯罪小説で、最後まで読むとそれがわかります。
・しかし「匿名作家は二人もいらない」という邦題は変です。原題は「WHO IS MAUD DIXON?」。
次号3月7日月曜日
by 2022.03.04